研究実績の概要 急性浮腫性膵炎モデルであるcaerulein膵炎モデルにtrypsinを付加した独自の壊死性膵炎モデルを用いて、活性酸素スカベンジャーの関与について検討したところ、膵組織中の活性酸素スカベンジャーは作成後30分からCu、Zn-SOD、GST、CATの低下とLPOの上昇を認め、膵炎発症初期に活性酸素が関与することが示唆された。また急性壊死性膵炎に対しSOD、CAT、SOD+CATをそれぞれ皮下注入し、活性酸素スカベンジャー投与について検討したところ、SOD、CATの投与により血中膵酸素は若干の抑制をみたが膵組織中のスカベンジャーの動態からは膵炎抑制効果は認めず、また病理組織所見では初期変化である間質浮腫は若干の抑制を認めたが、病態の主体となる壊死巣についての効果は認めなかった。以上の結果より、壊死性膵炎の初期に活性酸素が関与することは明らかとなったが、壊死性膵炎に対する活性酸素スカベンジャー投与は病態進展の防止には十分ではなかった。膵炎治療における活性酸素スカベンジャー投与の有効性については、スカベンジャーの投与量、投与方法等など今後さらに検討すべき事項は残されているものの、今回の検討で膵炎発症に活性酸素が関与しているにも拘らずスカベンジャー投与における効果が十分でなかった背景には、膵腺房細胞が壊死となるような強い侵襲には活性酸素のみならず膵酵素活性化、各種サイトカインによる傷害など多因子による多元的な関与があることが考えられ、膵炎重症化機序の十分な解明が必要であると考えられた。
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