研究概要 |
逆行性脳灌流法は胸部大動脈瘤領域の手術における脳保護方法では、超低体温循環停止法の補助手段として、脳保護許容時間の延長を目的として臨床的に利用されている。逆行性脳灌流法に関しての基礎的研究として、生体脳微小循環観察と脳組織観察を併用し、低体温下の逆行性脳灌流の過程を観察、記録し、評価、解析した。これにより至適逆行性灌流条件を推測した。 方法:Wistar系ラットを用いて腹腔内麻酔を施行、上行大動脈を確保した後、頭頂部にclosed cranial windowを作成し、内腔を人工髄液を用いて内圧を調節し灌流した。落射型蛍光顕微鏡下に頭部を固定し、closed cranial windowを介して微小血管領域における変化をcontrast mediumを用いて観察した。脳微小循環の変化は灌流圧を調節し観察する事により行った。脳表微小循環像の解析は、血流測定システムを用いておこなった。 結果:頭蓋内圧を逆行性灌流における至適圧と推定される1-3cmH_2Oとしたところ、逆行性灌流圧20-30mmHgでの条件下で、低体温下の心拍動下の脳表循環の1/5から1/6で逆行性に灌流される事が観察された。低体温環境での逆行性灌流時における脳表微小循環像は,灌流当初は常温像と比較して血流速度の分布が近似しているものの,時間が経過するにつれ静脈,動脈間の血流分布が異なっていくことが観察された。 考察:頭蓋内圧を適正と推定される生理的内圧に調節したところ、逆行性灌流圧20-30mmHgでの条件が至適逆行性灌流条件と推定された。また、低体温時では逆行性灌流圧と頭蓋内圧、脳浮腫の関係が常温時とは異なった影響を及ぼしていると推測された。
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