1.胸肋挙上術施行後10年以上経過漏斗胸症例の主観的形態:漏斗胸に対し胸肋挙上術を施行した症例について主観的形態に対する満足度をアンケート調査にて、5段階評価を行った。近接期を含めた調査では、回答を得られた335例中298例(89.0%)が普通以上の満足度であったが、10年以上経過症例では16例中9例(56%)であった。不満足の原因が前胸部陥凹によるものは3例で術後数年を経て陥凹が出現していた。過去17年間の再陥凹に対する再手術症例についても検討したが、胸肋挙上術1025例中2例(0.2%)と少なかったが1例は10年以上経過例であった。 2.術後10年経過時に外来検診による術後形態の客観的評価:術後10年を経過して外来受診し得た57例について検討した。臨床分類I度の陥凹を10例(17.5%)、II度の陥凹を8例(14%)に認めた。しかし術前後の陥凹度の比較ではいずれの症例も術前に比し陥凹度は改善していた。術前より認められた心電図の胸部誘導におけるP波の陰転化は42例(74%)に改善が見られた。術後陥凹度II度の症例8例中6例では心電図所見で改善が得られなかった。 3.術後10年目の肺機能:術後10年目の肺機能(n=57)は%VC81.7【+-】11.9、FEV1.0%90.4【+-】6.2と拘束性障害、閉塞性障害とも認められなかった。5年目及び10年目に呼吸機能検査を施行し得た18例では5年目%VC87.2【+-】5.7、FEV1.0%90.0【+-】7.4、10年目%VC83.9【+-】12.5、FEV1.0%90.0【+-】5.1と有意差なく経時的変化は認めなかった。 4.術後陥凹度と至適切除肋骨長の検討:胸部CTにて再陥凹部での予測切除長を実際の第5肋骨切除長と比較したが有意な相関は得られず2次元画像での切除長の予測は困難であると考えられた。今後ヘリカルCTでの3次元像での検討を行う予定である。
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