研究概要 |
α-fetoprotein(AFP)を産生する悪性胚細胞腫に対し、アデノウイルスを用いてAFP-promoterの制御下にAFP産生腫瘍細胞のみに選択的にHelpes Simplex virus Thymidinekinase(HSV-TK)遺伝子を発現させてこれを殺傷する治療方法の基礎的実験を行い以下のごとき結果を得た。 (1)遺伝子治療の治療実験に用いるアデノウイルスベクターの作成。 E1A,E1B遺伝子を欠損させ、非増殖型にしたアデノウイルスベクターAdexlcwにhuman AFP promoter-HSV-TK遺伝子を導入し、E1A,E1B遺伝子を発現している293細胞にてアデノウイルスを増殖させ、セシウム密度勾配法を用いて精製し、1X10^<12>PFUのウイルス液を作製した。 (2)作成したアデノウイルスベクターのin vitroにおける特異的遺伝子発現効果の検討。 (1)で作製したウイルスの感染による特異的遺伝子発現を検討するため、AFP産生腫瘍細胞株であるHepG2細胞及び非産生腫瘍であるHeLa細胞、COS7細胞にそれぞれ感染させた。MOI10以上においてAFP産生HepG2細胞ではgancyclovir 1 μg/ml投与によって有意に増殖が抑制されたが、AFP非産生Hela,COS7細胞では増殖抑制効果が認められなかった。以上より、human AFP-promoterによって、AFP産生細胞における特異的遺伝子発現が得られた。 現在SCID mouseに皮下移植したAFP産生腫瘍human embryonal carcinomaを用いて、in vivoにおける本遺伝子治療の効果について検討中である。
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