研究概要 |
RT-PCR法を用いて、ラット脊髄後根経節(DRG)に発現して実際にシュワン細胞の増殖をコントロールしているglial growth factor(GGF)のアイソフォームを解析した結果、関連するクローンが14種類得られた。内2種類は、既知のNDFβ1およびGGFIIに相当したが、ハイブリダイゼーションおよびシ-エンシングの結果、他の12種類は、全く新しいアイソフォームであると考えられた。従来のものと比較して特に顕著な構造上の相違を示したもの6種類は、すべてクリングル構造をコードするエクソン1を含むが、同時に多様な細胞内ドメインも含んでいた。このように、DRGにおいて、既知のものとは異なる多種類のGGFのアイソフォームがシュワン細胞の増殖を調節している可能性が示唆された。また、リボプローブマッピング法を用いて出生後のラットDRGにおけるGGFmRNAの発現を解析した結果、1)膜貫通部位を有さない分泌型が優位に発現すること、2)出生後約1週間はGGFの発現に著明な低下はなく、ほぼ一定していること、の2点が明らかとなった。in vivoでのシュワン細胞の増殖率は、出生後1日目に最大になり、以降急速に低下する(J.Nakao et al.,in press)。これらの結果は、出生後2日目以降に、シュワン細胞の増殖を抑制的にコントロールする因子の発現が増大することを示唆する。また、3′RACE法の結果、レセプター結合部位であるEGF様ドメインを有さない特殊なアイソフォームがDRGに発現することが明らかになったが、胎児ラット脳cDNAライブラリをスクリーニングした結果、関連する2kbp長のcDNAクローンを2種類得て、現在全塩基配列の解析を進めている。このEGF様モチーフを有さないアイソフォームが、in vivoでGGFに拮抗してシュワン細胞の増殖を抑制的にコントロールしている可能性があると考えている。
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