O-2Aプロジェニタ-はオリゴデンドロサイトとタイプ2アストロサイトの共通の前駆細胞として知られているが、in vivoではどのような状況下でO-2Aプロジェニタ-からタイプ2アストロサイトへの分化が誘導されるかについては知られていない。我々は、タイプ2アストロサイトへの分化が外傷時に誘導されると考え、検討した。 新生仔ラット大脳を培養してO-2Aプロジェニタ-とタイプ1アストロサイトが共存する培養系を作成し、これをピペットチップの先端で掻爬することで局所的に損傷を与えた。その後、経時的にタイプ2アストロサイトのマーカー蛋白であるA2B5抗体、抗GFAP抗体で免疫染色を行った。非損傷群や損傷部位から離れた(1000μm以上)部位では、タイプ2アストロサイトの割合に時間経過に伴う変化がなかったのに対して、損傷部位の近傍(500μm以下)では優位にタイプ2アストロサイトの割合が増加した。さらに損傷部位の近傍では、O-2Aプロジェニタ-のうち長い突起を持つ、形態学的にはタイプ2アストロサイトへ分化しつつある細胞の割合も増加した。タイプ2アストロサイトは増殖能がないという報告から、増加したタイプ2アストロサイトはO-2Aプロジェニタ-より分化したものと考えられた。 このタイプ2アストロサイトへの分化を誘導する因子として、毛様体由来神経栄養因子(CNTF)が知られている。そこで、この培養細胞を抗CNTF抗体で免疫染色したところ、タイプ1アストロサイトが陽性を示した。CNTFは構造上シグナルペプチドを持たないために細胞損傷時に放出されると予測されていることから、外傷時にタイプ1アストロサイトから放出されたCNTFを介して、O-2Aプロジェニタ-からタイプ2アストロサイトへの分化が誘導された可能性が示唆された。
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