1)99mTc-MIBIトレーサーを用いた脳腫瘍核医学イメージングの技術的検討; 99mTc-MIBIは、心筋血流測定用に開発されたトレーサーであり急速相(early image)は血流の要素を反映する。P糖蛋白発現を介した腫瘍細胞への集積は緩徐相(delay image)として出現すると考えられ、臨床例を用いた経時的な撮像の結果early imageはトレーサー静脈内投与15分後、delay imageは3時間後に撮像するのが適切と考えられた。 2)99mTc-MIBIトレーサーを用いた脳腫瘍臨床例の検討(201Tl-SPECTとの比較);99mTc-MIBIトレーサーを用いた核医学イメージングにおいて、腫瘍部はheterogeneousな集積像を示し、同一腫瘍内でも腫瘍細胞、腫瘍血管に発現するP糖蛋白に量的あるいは質的差異が存在する可能性が示唆された。腫瘍細胞膜のNa-K channelの活性を反映する201Tl-SPECT像との比較では、両者の画像所見に相関は見られず、99mTc-MIBI集積像は従来悪性度の指標とされる201Tl-SPECT像とは独立した現象を見ていることが確認された。 3)P糖蛋白関連薬剤(VCR)による99mTc-MIBI核医学イメージの変化; VCR投与症例の99mTc-MIBI像は経時的に集積性が若干変化する傾向が認められた。全体としては集積が低下する傾向が認められ、P糖蛋白高発現の腫瘍細胞クローンのselectionまたは発現の誘導が起こった可能性が考えられた。VCRを併用した化学療法の治療成績は症例数、観察期間の不足より充分な結論を得ていないが観察期間内においてprogressive diseaseとなった例はなかった。 まとめ;これまで脳腫瘍領域では必ずしも高い治療成績を示さなかった既存の強力な抗癌剤のなかにも、その抵抗性機序を理解し正しい適応を決定することで治療成績の向上を望めるものが存在する。現在我々はこのイメージングを導入時の抗癌剤の選択だけでなく、維持療法中の抗癌剤変更時期の早期決定にも役立つものとして検討を進めている。
|