ユビキチンは、複数の酵素の作用によりATP依存性に細胞内の短寿命蛋白質や異常蛋白質に結合し、産生されたユビキチン蛋白質はマルチユビキチン化反応を生じ、ATP依存性の26Sプロテアソームにより分解されます。近年、生体内でのユビキチンの存在様式には遊離型(free ubiquitin)と結合型(multi ubiquitin)があり、それぞれ異なる機能があることが判明してきました。一方、くも膜下出血後に脳血管れん縮を来すことは周知の事実ですが、その機序について分子レベルでの解明はなされていません。そこで今回、試料としてくも膜下出血後の脳脊髄液を経時的に採取し、その脳脊髄液中のユビキチンの存在様式を定量化しました。 1) Free ubiquitin RIA 試料をヨード化-遊離ユビキチン(^<125>I)、抗ユビキチンポリクローナル抗体US-1を用いて、その反応後の放射活性を測定し、Free ubiquitinの定量とする。 2) Multi-ubiquitin chain EIA 抗マルチユビキチン鎖モノクローナル抗体FK2をABC法にて発色させ吸光度(450nm)測定しMulti-ubiquitin chainの定量とします。 現在、症例数の関係から統計学的な有意差についての検討はできませんが、脳血管れん縮期に相当する出血後7日目前後に遊離型(free ubiquitin)の増加が認められる傾向があります。また結合型(multi ubiquitin)については比例して多少の増加を認める傾向がありました。
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