持続静脈麻酔下に、脳定位固定器を用いてラット延髄の小細胞性網様核に薬剤を微量注入si血圧と心拍数の変化を調べた。ラット延髄の小細胞性網様核では、Serotonin-antagonist及びSerotonin-agonistの血圧に及ぼす影響が左右で全く正反対であった。つまり、左側の小細胞性網様核にMethiothepin(Serotonin-1 antagonist)を注入した場合、10秒後に血圧の上昇を認めるが、右側の小細胞性網様核にMethiothepinを注入した場合、逆に10秒後に血圧の低下を生じた。一方、Buspirone(Serotonin-1 agonist)を同様にして左右の小細胞性網様核に注入した場合、今度は左側で血圧の低下が認められ、右側では血圧の上昇を認めた。また、Methiothepinを注入した場合の血圧変化は左右ともに容量依存性であったが、心拍数の変化は薬物の容量に依存していなかった。以上の結果より、ラット延髄の小細胞性網様核では左右で正反対の血圧調節をおこなっている部位が存在し、これらの反応はセロトニンレセプターを介していると考えられた。ここまでの研究結果については、第24回日本救急医学会総会及び第55回日本脳神経外科学会で発表(口演)した。さらに、その後の研究により、左右非対称の反応を示す部位はごく小さな領域に限られており、腹側・背側・外側・中心側・吻側・尾側に1mmずらした領域では同様の反応を認めることはできなかった。この研究結果は、脳研究の分野で一流雑誌といわれているBrain Researchに受理され、現在印刷中である。 今後は、小細胞性網様核以外の部位へのセロトニンの注入、他の血圧調節中枢との関係、高血圧ラットでの反応などの実験を行う予定である。
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