本年度の研究により次のことがわかった.(1)移植組織への血液の流入、流出血管を共に静脈にとっても良好な条件下の移植組織内では動脈系にも毛細血管にも血流は存在している。(2)流入流出血管をともに静脈に取った移植組織内では、流入流出静脈間の交通静脈をシャントする経路が最も抵抗が小さいと考えられる。流出静脈を1本よりも2本にしたときのはうが当然抵抗の少ない交通静脈の数も増え、チェンバーのついている耳介遠位部まで到達する血流量は減少すると考えられる。言い換えれば、流入静脈より準出静脈ヘシャントしてしまうような経路は少なく細い方が末梢循環には良いといえる。従って、静脈皮弁の中でも通過静脈型(flow-though type)は、流入した血液のほとんどが短絡して流出してしまうため基本的に末梢循環の悪い皮弁といえるだろう。(3)流入静脈、流出静脈を同一にしても、チェンバー内に観衆される血流が、1.血流安定群、2.血流不安定群、3.血流を全く認めない群に分かれてしまったのは何故だろうか。流入動脈圧の個体差、静脈分布(走行)パターンの個体差が考えられるが、振り替えって考えると、特に前者が大きな原因の1つではないかと考えている。(4)流入静脈を移植組織内で結紮しても遠位部まで血液は流れ得る。このことはすなわち静脈弁が正常に機能して血液の逆流を完全に遮断していても血液はそれを迂回して遠位部まで到達しうることを示唆している
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