1。研究目的:キーンベック病の治療としてハイドロキシアパタイトを核とした腱球(以下HA腱球)がcarpal collapseを防止できる置換材料となりうるか、家兎月状骨をHA腱球を用いて置換し、carpal height ratioと橈骨関節面の関節症性変化を調べた。 2。方法:使用動物は体重2.0〜2.5kg、雌の成長日本白色家兎46羽92肢を用い、A。Bの2群に分けた。A群の23羽46肢は右をHA腱球、左を腱球で置換し、B群の23羽46肢は右をHA腱球、左を未処理のコントロールとした。HA腱球置換には後肢の前頸骨筋腱を用い2×2×2mmの多孔性ハイドロキシアパタイトを核として作成した腱球を用いた。術後は24週まで経時的に軟エックス線像を撮影しcarpal height ratio(CHR)を計測した。また、非脱灰・トルイジンブルー染色の標本を作成し、HA腱球及び橈骨関節軟骨の組織所見を調べた。さらに、脱灰標本を作成し抗ヒトI・II型コラーゲン抗体で免疫染色を行いHA周囲の腱組織におけるコラーゲン抗体で免疫染色を行いHA周囲の腱組織におけるコラーゲンの局在を調べた。 3。結果:(1)CHR:術後24週でA群ではHA腱球肢0.23±0.01で、腱球肢は0.21±0.01より高かった(p<0.05)。B群ではHA腱球肢、コントロール肢ともに0.23±0.01で有意差はなかった。(2)組織学的変化:術後24週までにHA腱球周囲の橈骨関節軟骨に明らかな変性所見は認めなかった。術後4週よりHA周囲の腱組織に細胞周囲基質が抗ヒトII型コラーゲン抗体で染色された軟骨化成細胞群が出現し始め術後24週では全例に認めた。 4。考察と結果:HA腱球による月状骨置換術はCHRの有意な低下はなく carpal collapseを防止でき、橈骨関節面に明らかな関節症性変化をきたさなかった。さらに、HA周囲の腱組織にII型コラーゲンを有する軟骨化成細胞が見られることより、HA周囲に軟骨組織が形成される可能性が示唆された。 HA腱球置換術はキーンベック病における一治療手段として期待できるものと思われる。
|