研究概要 |
我々は骨軟部悪性腫瘍における温熱療法の抗腫瘍効果をin vitroにおいて数種の細胞株を用いて比較、検討してきた。その結果、軟部悪性腫瘍のうちで最も発生頻度の高い悪性線維性組織球腫(Malignant Fibrous Histiocytoma)の細胞株(MFH-2NR)が非常に高い温熱感受性を示すことが分った。さらに、このMFH-2NRは42℃・43℃のmild hyperthermiaではアポトーシスによって、44℃以上のsevere hyperthermiaではネクローシスによって、そのほとんどが死に至ることが判明した(Int. J. Cancer : 66, 347-351, 1996)。 このMFH-2NRに43℃・1時間の温熱刺激を行い、その前後でのbaxとbcl-2の発現量の変化をウエスタンブロット法で調べたところ、baxタンパクは加温とともに増加し、そのレベルは温熱刺激後12時間まで維持された。一方bcl-2の発現量にはほとんど変化が見られなかった。またp53に関しても調べたが、同様に変化は認められなかった。これらの傾向はノーザンブロット法によってメッセンジャーRNAにおいても同様なことが確認された。以上よりMFH-2NRでは温熱刺激によって、p53の関与なしにbaxがbcl-2に比して増加するために、アポトーシスが誘導されることが示唆された。また、加温とともに30kDa前後のタンパクが増加する傾向が認められ、現在このタンパクを同定中である。
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