研究概要 |
対象は外来、入院加療された胸腰椎圧迫骨折及び大腿骨頚部骨折患者症例で、末梢血を用いてRFLP(制限酵素断片長多型)解析を行った。制限酵素はBsmI、ApaI、TaqIの3種類を用い、切断されない対立遺伝子をB,A,Tとし切断される対立遺伝子を各々b,a,tとした。解析した症例のビタミンD受容体遺伝子多型はbbaaTT,bbAaTT,BbAaTtが多く骨折型での有意差は認めなかった。対照群との比較でも遺伝子多型頻度に有意差はなかった。低骨塩量を規定しているとされるBBおよびttの遺伝型頻度は少なく白人での発現頻度と比較すると諸家に報告されている様にビタミンD受容体遺伝子には人種差があると考えられた。また一部の症例では腰椎骨密度を測定したが症例数が少なく遺伝型と骨密度の相関ははっきりしなかった。対象の骨折患者には環境因子としての危険因子を配慮するため質問票によりステロイド使用歴、分娩歴、骨粗鬆症の治療歴を調査した。今後さらにビタミンDの遺伝子多型の解析をすすめ高齢者骨折の危険因子マーカーとしての遺伝子多型の意味を明かにしたい。また従来、本邦と欧米では活性型ビタミンDの骨粗鬆症に対する治療の有効性については議論のあるところであるがビタミンD受容体遺伝子多型の人種差がこれらの議論の解決の糸口になる可能性もあり、遺伝型に応じた活性型ビタミンD投与量を設定することで治療あるいは予防効果の向上をもたらす可能性も考えられる。
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