骨軟骨移行部での結合がどの様な機構で保たれているかは、組織学的にも力学的にも十分解明されていない。本研究では成熟度による移行部の結合状態について、力学的強度および力学試験による移行部での破壊形態の観察の両面から調査し、実際の臨床像と対比して検討を加えた。関節骨軟骨の疲労試験には、-30℃で冷凍保存された成熟ブタ(生後2〜3年、体重約300kg)および幼若ブタ(生後約6ケ月、体重約110kg)を用いた。膝蓋大腿関節大腿骨関節面よりダイヤモンドカッタにて、軟骨骨複合体を採取し試料とした。これらを自家作成の治具に把持し、湿潤状態を保持し軟骨部分に負荷を加えた。荷重装置には鷺宮製作所製サイナミックサーボ疲労試験機を用い、荷重条件はサイン波で1Hzとした。以上の実験結果より、繰り返し荷重のうち、関節面に対し接線方向に作用するせん断力による損傷は、幼若関節および成熟関節の障害発生に破壊的かつ加速的に働くことがわかった。せん断力による破壊限界荷重での損傷は、幼若関節では軟骨下骨板に沿って初発する閉鎖型損傷であった。これは正常な関節軟骨と軟骨下骨の亀裂を特徴とする、離断性骨軟骨炎の先駆的損傷形態の一つと考えられた。これに対し成熟関節では、関節軟骨表層に初発する開放型の損傷であり、変形性関節症に類似した損傷であると予想される。以上、材料力学的観点から、実験的に関節障害発生の限界荷重値をもとめ関節損傷を作り出した結果、臨床で見られる関節障害は、本実験設定と同一の力学的条件で生じ得る事が示唆された。 なお、本研究の内容は第23回日本臨床バイオメカニクス学会にて報告し、現在同学会誌および東海大学スポーツ医科学雑誌に論文投稿中である。
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