研究概要 |
末梢神経損傷時の自家神経移植に替わる生体内吸収型神経再生補助グラフトとして,我々がこれまでに開発したラミニン(LN),フィブロネクチン(FN)を二重コーティングしたコラーゲングラフト(LFグラフト)に,末梢神経の再生・伸長促進因子であるNGF-7Sを付加してLN-FN-NGF三重コーティンググラフト(LFNグラフト)を作製し,その神経再生への有効性を検討した. 豚皮I型コラーゲン製の外筒(直径2mm、長さ12mm)に同じコラーゲン製の70μm径の糸100本を入れ,これをPBSに溶解したLN,FN,NGFに浸漬して吸着させLFNグラフトとした.これをWistarラット坐骨神経欠損部に移植した.対照として未コーティンググラフト,LFグラフト,NGFコーティンググラフト(NGFグラフト)を用いた.移植30日目、全てのグラフトでコラーゲンは吸収され,再生した神経組織が欠損部を置換していた.グラフト中央部の再生有髄軸索数はLFN,NGF両グラフトが未コーティンググラフトに比して有為に多かった.移植60日目では全てのグラフトで神経周膜に囲まれた有髄無髄軸索の発達した再生神経像が見られたが,未コーティンググラフトではその数が抑制されていた.再生神経の運動神経伝導速度を測定したところLFNグラフトが最も高い値を示した.以上のことから,LN-FN-NGF三重コーティンググラフトが末梢神経再生に有効であることが明らかとなった(島田ら:第101回日本解剖学会,4月,福岡,1996;湯浅:金医大誌,1996).この結果をふまえて,凍結融解および界面活性剤処理してコラーゲン基質を残した神経片にLN,FNをコーティングしたグラフトを同種または異種移植したところ良好な神経再生をみた(久藤:金医大誌,1996;桝谷ら:金医大誌,発表予定).
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