研究概要 |
1.対象の雑種成犬を大動脈遮断・解除のみを施行した群(I群,n=7)、大動脈遮断前、10mL/kgの容量負荷のみを施行した群(II群,n=8)、大動脈遮断解除前より実験終了まで一酸化窒素(NO)吸入(15ppm)のみを施行した群(III群,n=8)、大動脈遮断前容量負荷を、遮断解除前より実験終了までNO吸入を施行した群(IV群,n=7)の4群に分けた。全例、麻酔導入後PaCO2の値が約40mmHgとなるよう人工呼吸を行った。前足動脈に観血的動脈圧ライン、外頚静脈に右室駆出率測定用肺動脈カテーテルを挿入した。開胸後、横隔膜直上にて大動脈遮断可能にし、各群において大動脈遮断前、遮断解除前、遮断解除後5分、15分、30分、60分で各種血行動態、右心機能パラメータを測定した。 2.肺動脈圧は各群とも遮断解除後5分には遮断解除前に比べ上昇し、II群、IV群は他の群より高く上昇した(1群16mmHg→22mmHg,II群18mmHg→29mmHg,III群14mmHg→21mmHg,IV群17mmHg→31mmHg)。遮断解除後15分以降、1群、III群ではほぼ遮断解除前の値に戻ったが、II群,IV群では他の群より高い傾向がみられた。以上より、遮断解除前の容量負荷は遮断解除後の肺動脈圧上昇を助長するが、NO吸入はこれを抑制しないことが推察された。 3.右心機能の指標である右室駆出率は、各群とも遮断解除前に比べ、遮断解除後5分に減少した(I群37%→30%,II群34%→30%,III群39%→31%,IV群34%→29%)。また、遮断解除後15分以降、I群、III群ではほぼ遮断解除前の値に戻ったが,II群,IV群では減少したままだった。以上より、遮断解除前の容量負荷は遮断解除後の右室後負荷増加による、右心機能低下を遷延させ、NO吸入はこれを抑制しないことが推察された。
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