現在ラットの坐骨神経を露出しそれをゆるく結紮して神経原性疼痛のモデルを作成しているが、以前の報告のように必ずしも高温刺激に対する閾値の低下を全例において見ることができていない。ある例では逆に疼痛閾値の上昇をきたしてしまうことがあり、これらの原因として坐骨神経の結紮が足りずに神経が結紮の影響を全く受けていないか、あるいは強く結紮しずぎたため完全に神経が損傷を受けてしまったため完全な神経原性疼痛のモデルとならなかったと考えられる。神経原性疼痛のモデルを確実に作成することがこの研究にとっての基礎となるので、今後さらにこの手法に習熟し安定してこのモデルを作成できるようにならなければならないと考えている。あるいは結紮する代わりにホルマリンを局所に投与する方法も報告されているのでこうした方法を試みるのも一法かもしれない。一方、疼痛閾値の低下を見た例では坐骨神経結紮後一過性に全周波数領域で心拍変動のパワーの低下を見ている。例数が少ないのでまだ結論は出せないが、これがただ単に手術という一時的な侵害刺激によるものなのかあるいは神経原性疼痛と関連するものなのか興味深い。今後さらに例数を重ね、また長期にわたり心拍変動の変化を見ていく必要があるであろう。またMK-801の投与などの影響についての結果はまだ得られておらず、今後さらに研究を進めていかなければならないと考えている。
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