1.冠動脈は過換気やアセチルコリン等の薬剤によって収縮することが知られているが、冠動脈スパズムの細胞内メカニズムは未だ十分には解明されていない。平滑筋収縮とイノシトールリン脂質(PI)代謝の間には直接的な関係があり、冠動脈では過換気やアセチルコリンはPI代謝を亢進させることが示唆される。今回の研究ではノルエビネフリンやクロニジン等の薬剤の平滑筋収縮反応やPI代謝への影響について検討した。 2.方法:(1)平滑筋収縮反応をみるために収縮実験に必要なトランスジューサ-(岸本医科、京都)や記録計(セコニック、東京)を平成8年度の科学研究費補助金で購入した。(2)雄性ウイスターラットの胸部大動脈を取り出し、内皮を剥離しない群と剥離した群に分けたのち3mmのリング標本を作製し、上記装置を用い酸素95%、二酸化炭素5%で通気したKrebs-Henseleit液中で1.5gの静止張力を与え定常状態をえた。 3.結果と考察:内皮を剥離しない群ではクロニジン1μMの投与で張力はほぼ0.2gであったが剥離した群では張力はほぼ1.5gの張力が得られた。この張力はプラゾシン0.1μMで完全に抑制されるが、アチパメゾル(α_2アンタゴニスト)では100μMでほぼ50%抑制された。以上のことからクロニジンによる血管平滑筋収縮反応はα_1受容体を介したものであり、内皮が損傷をうけた冠動脈ではクロニジンは収縮を起こすことが示唆される。
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