今年度に行った研究:ラットの腎臓を用いた虚血-再灌流モデルでは、ATF-2、AP-1、Jun2TREを用いたゲルシフトでは再灌流後に結合が増強したが、NF-κBでは結合に明らかな増強が見られなかった。脳を用いて、虚血-再灌流を作成し転写活性化因子とDNAの結合を調べたが、腎臓と比べると、虚血を起こす以前より結合が強く、ATF-2、AP-1に関しては虚血-再灌流による更なる増強は認めなかったが、Jun2TREでは再灌流により増強を認めた(NF-κBに関しては未施行)。しかし、MAPキナーゼの活性亢進は見られず、蛋白質のリン酸化の関わりはなお不明である。また、心臓による虚血-再灌流モデルを、培養心筋細胞およびラット摘出心を用いて試みたが、培養心筋細胞の作成はまだ半ばであり、ラット摘出心にてもモデルの確立にいたっておらず、明らかな結果を得るに至っていない。 今後の研究の展開:虚血-再灌流を腎臓、脳、心臓によるモデル、あるいは培養細胞を用いて作成し、NF-κBや他の転写活性化因子とDNAの結合が増強するかどうかを検討する。有意に増強する臓器および因子があれば、蛋白質のリン酸化がどの程度関わっているかを明らかにしたい。
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