研究概要 |
1.硬膜外,脊椎麻酔中の客観的麻酔領域判定 硬膜外,脊椎麻酔中の患者において,知覚神経(求心路)遮断の指標として交感神経性皮膚血流反応(Sympathetic flow response,SFR)を利用することにより,麻酔領域判定が客観的に可能であるかを検討した。指尖球部にレーザードップラ血流計を装着し,皮膚分節に準じて,尾側から頭側に冷刺激(氷塊)と痛覚刺激(20mA)を与え,SFRの有無を観察した。SFR出現の有無と,口頭による冷覚遮断領域(cold sign)と痛覚遮断領域(pin-prick法)は良く相関し,侵害刺激遮断効果の指標となることが示された。 2.全身麻酔中の客観的麻酔領域判定 1)硬膜外併用全身麻酔中の患者において,SFRの有無による麻酔領域判定を試みた。全身麻酔導入後,吸入麻酔薬0.5MAC以下の状態で,皮膚分節に準じて,尾側から頭側に痛覚刺激(20mA)を行った。Th6以下の皮膚分節でSFRが出現した症例では,腹膜牽引によりSFRが出現し,侵害刺激遮断効果が不十分であることが予想された。この結果は,従来下腹部開腹手術時に必要とされている麻酔領域とほぼ一致しており,全身麻酔中の硬膜外麻酔の効果判定に有用であると考えられた。 2)全身麻酔中の侵害刺激遮断効果の指標としてのSFRを,血中カテコラミン濃度の推移から検討を行った。腹膜牽引によりSFRが出現しない場合,血中カテコラミン濃度に変化はなく,SFR出現時には血中ノルアドレナリンが増加した。これは侵害刺激の有無による変化と考えられ,SFRの有無は,侵害刺激の有無の判定に有用であることが裏付けられた。
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