実験動物として心原性ショック、敗血症性ショックともに、体重約2.5kgの日本家兎を各6羽ずつ用い、全身麻酔下、調節呼吸の条件で以下の実験を行った。 心原性ショックモデルは、血圧が対照値の30%程度になるように心タンポナ-デを起こし、2時間の観察を行った。動脈血炭酸ガス分圧(PaCO2)は経過を通じてほぼ一定であったのに対し、混合静脈血炭酸ガス分圧(PvCO2)は漸増し、40分後に(41.0±6.2torrから57.0±13.4torrへ)有意に上昇した。胃粘膜炭酸ガス分圧(PiCO2)、経皮的炭酸ガス分圧(PtcCO2)はPvCO2より急峻に、両者ともほぼ一致して増加し、PiCO2は20分後に(37.5±6.4torrから51.3±12.5torrへ)、PtcCO2は40分後に(37.8±5.9torrから67.3±25.2torrへ)、有意に上昇した。またPiCO2とPvCO2、PtcCO2とPvCO2、PtcCO2とPiCO2の間にはそれぞれr=0.86、r=0.71、r=0.91の相関関係があった。 敗血症性ショックモデルは、Lipopolysaccharide 20mg/kgを静脈内投与し、2時間の観察を行った。PaCO2は20分後に軽度上昇し、その後減少傾向を、PvCO2は全経過を通じて上昇傾向を示したが、有意な変化なかった。PiCO2はPvCO2より急峻に増加し、40分後に(41.3±8.5torrから59.3±12.3torrへ)、PtcCO2はさらにPiCO2より急峻に増加し、60分後に(45.2±13.1torrから90.8±37.7torrへ)有意に上昇した。またPiCO2とPvCO2、PtcCO2とPvCO2、PtcCO2とPiCO2の間にはそれぞれr=0.69、r=0.82、r=0.91の相関関係があった。 以上より、PtcCO2はPiCO2よりも測定値のばらつきが大きいことに注意の必要があるものの、心原性ショックにおいてはPiCO2と同等に重症度を反映し、敗血症性ショックにおいてはPiCO2より鋭敏に重症度を反映するパラメーターであると考えられた。
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