研究概要 |
【方法】ペントバルビタール麻酔犬を気管内挿管下に機械換気した。右外頚静脈からSwan-Ganzカテーテルを挿入し、大腿動脈にカニュレーションを行い、体および肺循環動態を連続記録した。実験系が安定した後に、1MACのイソフルラン(Iso)を20分間吸入し、平均肺動脈圧(MPAP)、肺動脈楔入圧(PCWP)、平均動脈圧(MAP)の変化を観察した。Iso吸入前と吸入終了直前に熱希釈法により心拍出量(CO)を測定した。ついで2MACのIsoを20分間吸入し、同様の研究を施行した。研究中、吸入酸素濃度は100%とした(Iso群)。また、IsoとNOの相互関係を検討する目的で、別の実験群ではNO合成酵素阻害薬であるL-NMA(30mg/kg)を前処置した状態で、同様の研究を施行した(L-NMA-Iso群)。 【結果】Iso群では1MAC,2MACののいずれの濃度のIsoでもMPAPは変化しなかった。MAPは1MACのIsoにより98.0±26.6から65.0±7.1mmHgに、2MACのIsoにより80.0±10.0から47.0±13.0mmHgに減少した。COは1MACのIsoにより2.2±0.4から1.6±0.31/minに、2MACのIsoにより1.6±0.3から1.3±0.31/minに変化した。L-NMA-Iso群では、1MACのIsoにより16.5±4.7から13.4±3.7mmHgに、2MACのIsoにより15.0±3.9から12.3±2.7mmHgに減少した。MAPはIso群と同程度の変化であった。COは1MACのIsoにより2.3±1.5から1.6±1.11/minに、2MACのIsoにより1.7±1.2から1.2±0.71/minに変化した。PCWPは両群においてIsoにより変化しなかった。 【まとめ】L-NNA非前処置状態ではIsoにより血圧が低下するが、肺動脈圧は変化しない。Isoの心拍出量およびPCWPに及ぼす影響はL-NNA前処置で変化しなかったため、IsoはL-NNA-Iso群においてより強く肺血管抵抗を減じた。これは、IsoがNO抑制による肺血管収縮作用とNO以外の肺血管拡張作用を有することを意味する。
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