研究概要 |
概要: 1.対象:研究の内容を十分に説明し同意を得られた40-70歳の結腸切除術を予定された患者14名を対象として研究を行った。 2.方法:対象患者を無作為にI群(pre-emptive analgesia群)とII群(非pre-emptive analgesia群)とに分けた。手術室入室後全例に硬膜外カテーテルを挿入し,I群はその直後に同カテーテルから1.5%カルボカイン13-15mLを注入してから全身麻酔を導入し,手術を開始した。II群はまず全身麻酔を導入し,手術開始1時間後に硬膜外カテーテルから1.5%カルボカイン13-15mLを注入した。いずれの群もその後は1時間間隔で必要量のカルボカインを注入した。全身麻酔の導入はチオペンタールにて行い,亜酸化窒素-セボフルランにて麻酔を維持した。筋弛緩薬としてベクロニウムを適宜用いた。 両群の患者において,A)手術室入室時(Control),B)手術開始直前,C)手術開始1時間後,D)手術開始2時間後,E)手術終了直後,F)手術終了2時間後の6時点で動脈採血を行った。検体をすみやかに冷却遠心分離して血漿を冷凍保存し,血漿中ACTH,ADH,cortisol,エピネフリン,ノルエピネフリンおよびドパミン各濃度を測定し,2群間で比較検討した。 3.結果:両群の患者において,血漿中ACTH,ADHおよびcortisol濃度はA時点(Control)と比較してB時点では差がなかったが,C,D,EおよびFの各時点において有意に上昇した。血漿中ACTH,cortisolおよびドパミン濃度はC,D,EおよびFの各時点においてI群と比較してII群は有意に高かった。 4.結論:硬膜外麻酔法によるpre-emptive analgesiaは,はじめは吸入麻酔法のみで維持し術中から硬膜外麻酔法を開始する方法と比べて,手術侵襲に対する術中および術直後の内分泌反応をより有効に抑制した。
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