研究概要 |
モルヒネの持続投与を受け、1週間以上安定した鎮痛が得られている症例(延べ25症例)について、傾眠傾向と腎機能およびモルヒネの活性代謝物であるM6Gの血中濃度と尿中排泄量を測定した。 傾眠傾向を認めた症例群の24時間Ccrの平均値は34.75ml/min,傾眠傾向を認めなかった群では79.92ml/minであり、傾眠傾向を認めた群では有意に24時間Ccrの低下を認めた。同様に傾眠傾向を認めた群のM6G腎クリアランスは39.26ml/minであり傾眠傾向を認めなかった群の170.87ml/minに対して有意に低下が見られた。 M6Gの腎クリアランスは24時間Ccrと相関し、腎機能低下によってM6Gが蓄積することが確認された。 一方、傾眠傾向を認めた群では尿量も有意に減少し、尿量の減少はM6G腎クリアランスと相関した。従って尿量の維持によりM6G腎クリアランスを維持することが可能であることが示唆された。同一症例における追加観察では、尿量が540ml/日と減少が見られた時点では強い傾眠を訴えたが、尿量が1648ml/日となった時点では傾眠傾向は全く認められなかった。それぞれの24時間Ccrは96.6,90ml/minと差がなく、M6G腎クリアランスは119.8ml/minから295ml/minと尿量の増加に伴って改善が認められた。 今回の研究から、傾眠傾向などのモルヒネの副作用は尿量の減少と関わりが深いことが明らかになった。従って、進行癌患者では、尿量を維持することにより、傾眠傾向をある程度回避できる可能性があることが示唆された。現在、M6Gの鎮痛作用の有無については議論がなされているが、今後M6Gの鎮痛力価が特定されれば、尿量からM6Gの蓄積の程度を予測し、モルヒネの投与量を調節することができる。今後、更に症例数を増やして、尿量とM6Gの関係を明確にする必要があると思われた。
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