[基礎実験]ラットを用い、ウレタン麻酔下に大腿動脈に挿入したカテーテルより動脈圧及び脈拍をモニターした。頸部背側より脊椎椎弓切除を行い、迷走神経背側核の近傍にボール電極を置き200Hz、100μsec、100μAの電気刺激を15分間与えて心拍数と平均血圧の変化を観察したところ、心拍数の減少および血圧の低下をみとめた。現在これら、循環系の抑制がブピバカインの全身投与によりどの様に変化するかを検索中である。 [臨床症例調査]:1991-96までの6年間に、大腿骨頚部骨折の診断で、0.5%ブピバカイン脊椎麻酔下に観血的整復固定術を施行されたのは42症例であった。このうち、循環作動薬投与、あるいは輸血治療を受けた20症例について、術中の収縮期血圧が80mmHg以下に低下し循環動態の安定に苦労した8例(A群)と、術中の血圧変動が軽度であった12例(B群)について、年齢、身長および体重あたりのブピバカインの量、麻酔レベルを比較検討した。 1.体重あたりのブピバカインの量は、A群0.08ml/kg、B群0.067ml/kgで、A群が有意に多かった。 2.年齢、身長あたりのブピバカインの量、および麻酔レベルに有意差はなかった。 循環動態の変動が激しかった群で使用されたブピバカインの量は他群に比較して多いながら、過量とはいえず、さらに麻酔レベルは他群に比較して差異がなく、過量のブピバカインによる麻酔レベル上昇によって誘発された循環抑制とは考えにくい。今後、術前状態、術中出血量との関連について統計学的検索を行う。
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