本研究はマウス免疫性造精障害モデルにおける精巣支持細胞(ライデッヒ細胞、精巣血管内皮、精巣マクロファージ、セルトリ細胞)の役割を機能形態学的手法で明らかにしようとする目的で行なわれた。各細胞に刺激を与える薬剤を単独でマウスに投与する予備実験から始めた。ゴナドトロピン全身投与では血管内皮の透過性が増し血清タンパクの血管外流出に加え一部白血球の間質への浸潤が見られた。墨汁の投与と併せて上記薬剤を投与した場合も墨汁を貪食した精巣マクロファージを確認できた。(無投与マウスでは貪食像を確認できなかった。)また精巣マクロファージの障害薬剤としてMDP(キッセイ薬品)を全身投与したが肝臓のクッパー細胞は障害を受けたものの精巣マクロファージは障害を受けなかった。次にMDPの精巣内局所投与を行なった。マクロファージの数は激減したが完全な除去には至らなかった。またMDP(水溶性)をコーンオイルと混ぜ超音波処理した懸濁液を貪食させて障害させるためコーンオイルの局所注射そのものの精上皮への障害を考慮に入れなければならないことがわかった。性ホルモン投与マウスではライデッヒ細胞数をテストステロンは増殖させた。一方エストロゲンではその数を減少させかつ造精障害をひきおこした。性ホルモンは精巣への局所的影響の他に免疫抑制作用も報告されているので現在進行中の免疫性造精障害モデルへの影響の研究ではその局所性効果と全身性効果の両者を考慮していく必要がある。免疫性造精障害モデルとして計画書に掲げた4つのモデルのうち現在(1)同系精巣細胞の感作と(2)アジュバントの静注(百日咳死菌)による処置を受けたマウスで精巣支持細胞を刺激・障害を行なっているがまだ一定の結果を得ていない。
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