われわれは、既に尿路感染症患者の尿中に遊出する好中球について、尿中に遊出後も機能が残存していることを解明してきている。また末梢血好中球は種々の物質によりプライミングを受け、刺激応答が著しく増強することを示してきた。今回は尿路感染症患者の尿中に含まれる物質により末梢血好中球が如何にプライミングを受け、その活性酸素の生成機構を変化させ、その尿路感染症の炎症反応の強弱に関与しているかを検討した。 ヒト末梢血好中球は既報の如く測定した結果、活性酸素を1.25×10^<-8>MのFMLP刺激で0.42±0.7nmol/5min/10^6cells、同じく1×10^<-9>MのPMA刺激で11.3±3.25nmol/5min/10^6cells生成した。この好中球に対し、患者感染尿をプライミングさせて活性酸素生成能を比較検討したが、患者の感染形態、プライミングの時間、感染尿の濃度等に関係なく活性酸素生成能の増強作用は認められかった。結果として、今回の検討では尿路感染症患者の尿中物質による好中球の活性酸素生成能の増強は認められず、尿路感染症の炎症反応の強弱と尿中物質との関連を好中球の活性酸素生成から関連づけることは出来なかった。 今後は症例の更なる蓄積に加え、尿路感染症尿に含まれる物質の分画を抽出し、その濃度やプライミング時間を変化させて好中球の活性酸素生成能を測定することで、尿路感染症への尿中溶解物質の関与を検討し、好中球の尿路感染症の関与等の尿路感染症機構の解明を続けていく予定である。
|