我々は、ウイルス感染時に細菌感染に対する感受性が増すことを検討するために、マウスサイトメガロウイルス(MCMV)感染マウスを用いて、実験的な細菌性尿路感染モデルを作成した。MCMV感染マウスの膀胱に逆向性に細菌を接種すると、MCMV感染マウスにおいては、尿中生菌数が著明に増加した。 MCMV感染マウスに緑膿菌を接種した場合、致死量のMCMV接種マウスでは死亡までの期間の短縮がみられた。また、非致死量のMCMV接種マウスでも、緑膿菌の膀胱内接種にて、マウスの死亡率が増加した。これらのマウスは全て敗血症にて死亡しており、MCMV感染時に細菌性尿路感染症を併発すると、容易に敗血症へ移行することがわかった。特に、ウイルス感染4日後に細菌を膀胱に接種した場合、接種菌量が約10^2cfuでも容易に敗血症に移行した。 これらの細菌感染症への感受性の増加は、MCMV感染によって引き起こされる自然抵抗性の減弱によると考えられる。致死量のMCMV感染は著明な好中球減少を伴う汎血球減少を来す。しかし、非致死量のMCMVはわずかな汎血球減少を来すのみである。さらに、致死量の1/100のMCMV感染時にも、細菌を接種すると尿中生菌数の増加を見ることから、単に好中球減少のみが細菌感染への感受性を増す因子にはなっていないことがわかる。MCMV感染時には、好中球の機能(貧食能、遊走能)の減弱が見られることから、軽微なウイルス感染は好中球機能の低下を引き起こし、これが、細菌感染症に対する感受性を増加させる因子となると考えられる。
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