【目的】ここ数年泌尿器科領域においても膀胱癌あるいは前立腺癌の根治手術の際に神経温存術式が行われることが多くなり骨盤内の神経路に関する立体的・解剖学的な位置関係の詳細な情報が求められるようになってきた。本研究では、立体的・解剖学的位置関係を明確にできるマクロ解剖学の長所を生かしながらさらに組織化学的な手法を用いwhole-mount染色をすることにより骨盤内臓の自律神経の詳細な走行を明らかにすることを目的とした。 【方法】死後6時間以内に病理解剖が行われた遺体より骨盤神経叢および直腸をen blockで採取し、Holt's液にて固定.Ach-iodideを用いwhole mount染色を行った。染色後、実体顕微鏡にて観察し、x11.3で写真撮影。computer graphic softを用い140枚の写真を合成し上下腹神経叢から両側骨盤神経叢および直腸膨大部後面に至るmapを作成しその神経走行について検討した。 【結果】本染色法により骨盤内の自律神経(上下腹神経叢、下腹神経、骨盤内臓神経、骨盤神経叢)の走行をその周囲組織を可能なかっぎり破壊することなく詳細に観察することができた。その結果、直腸後面で両側骨盤神経叢間を直接結ぶ神経線維の存在が確認されこれらの神経線維を介し左右神経叢間のでの機能的連係がが示唆された。また、交換系神経である下腹神経と骨盤内臓器との詳細な位置関係が解明され、膀胱全摘除術をはじめ泌尿器科領域に於ける手術に対し新しい解剖学的示唆を与えることが可能であった。
|