目的)我々はin Situ Rt-PCR法を用いてm-RNAの検出によって病理診断し、前立腺癌リンパ節微小病変の早期診断の技術を確立することを目的として研究を行った。対象と方法)前立腺癌に対し前立腺全摘除術を受けた症例の原発巣、骨盤内リンパ節を対象としたin Situ Rt-PCR法について、免疫組織化学法、HE染色法による病理診断と比較検討した。結果)in Situ Rt-PCR法では組織内にm-RNAの合成が保たれている場合には前立腺癌の病理診断が可能であることがわかった。PSAの検出感度は組織内のm-RNAの保存性に依存し、凍結標本を用いた検査では良好な感度が得られた。本法は、in Situ hybridyzation法よりも飛躍的に感度に勝り、再現性の優れた検査法であった。組織上のback groundを減らしsignalの特異性を保つためには組織の前処理、組織固定法が重要であると思われた。すなわち、通常の組織固定に用いられるfolmalinでは組織内蛋白と核酸との架橋反応が強く、PCR反応が阻害されることから、組織は新鮮標本を凍結保存、薄切標本作製後、PCR反応を行う直前の短時間(5分程度)固定が適当であると思われた。primerの組織内への浸透性は適切なprotease処理を行えば20mcr程度のoligonucleatideでは十分であることがわかった。考察)in Situ Rt-PCR法は前立腺癌のリンパ節の微小転移検出に有効であると確認された。特に低分化型腺癌においては免疫組織学法でのPSAの検出が困難な場合をしばしば経験する。これらの例ではPSA蛋白の合成程度に障害があるものと思われるが、n situ Rt-PCR法は免疫組織学法の欠点を克服し、従来不可能であった未分化癌の組織学的起源の探求に有用であると思われた。
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