目的:本研究では胚によってもたらされる子宮内膜上皮および間質細胞における胚受容能の発現機構およびその物質的根拠を明らかにする事を目的とした。 方法: 1)卵管内胚の存在が着床率に及ぼす影響の検討 5週齢ICR系雌マウスをPSMGまおよびhCGにて過排卵処理し、雄マウスと交配させ、膣栓確認日をDay1とし、Day4に子宮腔内から回収したblastocystを#1偽妊娠マウス(偽妊娠群)、#2妊娠1日目に両側utero-tubal junction(UTJ)を結紮した雌マウス(UTJ結紮群)にそれぞれ子宮腔内移植あるいは子宮内膜内移植を行い、胚発育を観察し、胚着床率を検討した。 2)PCNA発現からみた子宮内膜に対する卵管内胚の存在が及ぼす影響の検討 上記偽妊娠群およびUTJ群において子宮を経日的に回収し、3umの子宮横断切片を作製し、抗PCNA抗体を使用したFungらのABC法により、PCNA発現パターンを検討した。 結果: 内膜内移植では、UTJ結紮群において妊3、5、6日目に行った胚着床率は、偽妊娠群の同時期の胚着床率よりも有意に向上し、また腔内移植では、UTJ結紮群において日齢、2、5、6日目に行った胚着床率は同時期の偽妊娠マウの胚着床率よりも有意に向上することが明らかとなった。 そこでこの2群における着床率の差が子宮内膜間質における何らかの細胞生物学的機能の差に関連しているかを知るためにPCNAを増殖細胞の指標として、子宮内膜のPCNA陽性細胞の消長を観察し細胞動態の比較検討を試みたところ、偽妊娠群と比較して、卵管内に胚が存在するUTJ結紮群では時間経過ととも上皮から間質の方向に染色性の拡大が顕著に認められた。 以上の結果から、卵管内胚の存在によりまず子宮内膜間質細胞の増殖が誘導され、引き続いて子宮内膜の胚受容能も誘導されることが明らかとなり、この子宮内膜間質細胞の増殖誘導が胚受容能獲得に関与している可能性が示唆された。
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