研究概要 |
本研究は,婦人科腫瘍において最も汎用されているプラチナ製剤においてヒトの薬理学的パラメータ(AUC ; area under the curve や最高血中濃度や半減期など)を in vitro にフィードバックし in vitro pharmacodynamics を調べることにより臨床至適投与方法に関する因子の解明をすることを目的とし、下記の仮説の検証を行った.以下に各仮説とその結果を記す.なお,方法としては科研給付金により供与された機器・消耗品を用いて,DNA障害ならびにコロニー形成能を計測した.プラチナ製剤はCDDPと254-Sを用いた. 仮説1)プラチナ製剤においては,ヒトの薬理学的パラメータ数値をシュミレートした薬剤接触実験で,抗腫瘍効果は判定可能である. 結果1)DNA障害(DNA intra-/inter-strand crosslinks)ならびにコロニー形成能において薬剤効果は計測されたので仮説1は正しいことが立証された. 仮説2)プラチナ製剤においては,i)一定濃度薬剤接触実験,ii)段階的濃度変化にて薬理学的パラメータをシュミレートした薬剤接触実験のいずれの場合でも,薬理学的パラメータ特性はコロニー形成能およびDNA障害および apoptosis に影響を与える. 結果2)上記i)ii)のいずれの場合でも,コロニー形成能およびDNA障害は,薬理学的パラメータ特性に依存していた.よって,仮説2は正しいことが立証された. 仮説3)仮説2が立証された場合,コロニー形成能に最も影響を与える薬理学的パラメータ特性はAUCである. 結果3)コロニー形成能はCDDPにおいてはAUCに依存していたが,254-Sにおいては主としてDNA crosslink 量に有閾値依存をし,むしろ接触時間と関連がある傾向が認められた.よって,仮説3はCDDPでは正しいが,254-Sでは棄却すべき可能性が示唆された. 同じプラチナ製剤でありながらその pharmacodynamics は異なる薬理学的パラメータに依存する可能性があることが判明し,今後の研究での解明が必要であると考えられた.
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