研究概要 |
1.子宮頚部異形成上皮、子宮頚部初期病変の生検組織からの細胞株の樹立 産婦人科外来において、軽度異形成3例、中等度異形成4例、高度異形成4例、上皮内癌3例の計14例の生検組織を採取し、それぞれを処理後、培養を開始した。うち、12サンプルについては、初代培養に成功し、継代5代目まで、培養することができた。しかし、いずれもそのあと、senescenceを迎え、数ヵ月にわたって培養液の交換を続けたが、その後増殖を続ける細胞は、現在まで得られていない。これまでに、数例のみ異形成上皮からの不死化細胞株の樹立の報告はあるが、そのほとんどは、HPVの遺伝子がインテグレートされている。また、これまでの報告では、異形成においては、HPV遺伝子はエピゾ-マルの状態にあることが知られている。これらのことより、異形成からの不死化細胞株の樹立には、かなり厳しいセクションが必要なことが推察され、より多数の症例からの試みが必要と思われ、現在それを継続中である。 2.HPV-DNA導入によって得られた細胞株における検討 生検組織からの不死化細胞株が得られていないため、我々がすでに得ていたHPV-DNA導入不死化細胞株、またそのtumorigenic cell lineにおいて、tumor supressor gene P16(MTS1)の発現、点突然変異の有無についてNorthern blotting, Western blotting、 PCR-SSCPを施行した。その結果、不死化後、P16の発現の亢進が認められたが、悪性形質転換の前後で変化は認められなかった。また、点突然変異は認めなかった。これらのことより、P16は不死化前癌病変から悪性形質転換の過程においては、特に重要な働きはしていないことが示唆された。
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