研究概要 |
1)血管透過性の客観的評価方法 エバンス・ブルー静注30分後の、腹腔洗浄液および卵巣抽出液中のエバンス・ブルー濃度を吸光度測定により定量する方法は、血管透過性の客観的評価法として確立した。 また、これによりゴナドトロピン投与による腹腔内および卵巣の血管透過性の亢進を証明し得た。 2)卵巣過剰刺激症候群(OHSS)モデルラットの作成 22日齢、雌ラットに対して、eCG10単位4日間連日投与し、5日目にhCG30単位投与するすることにより、卵巣の腫大、および上記の評価方法による血管透過性の亢進を認めた。以後、本投与法により得たラットを、OHSSモデル・ラットとして研究に供した。 3)RU486,プロゲステロンの投与 上記OHSSモデル・ラットに対し、hCG投与24時間後に7群に分け、RU486(プロゲステロン・レセプター・アンタゴニスト)0,1,5,10,15,20mg/kg、またRU486 5mg/kg+プロゲステロン10mg/kgを皮下注にて投与した。腹腔・卵巣エバンス・ブルー濃度はRU486 5mg/kg投与により有意に低下し、プロゲステロン同時投与により回復を示した。一方、RU486 20mg/kg投与群はコントロールに比較し腹腔・卵巣エバンス・ブルー濃度はむしろ亢進する傾向を認めた。これらの結果より、本研究に用いたOHSSモデルにおいては、ゴナドトロピン投与による血管透過性の亢進にプロゲステロンが関与していることが証明され、OHSSの病態におけるプロゲステロンの関与が示唆された。さらに、RU486過剰投与により血管透過性がむしろ亢進したことは本試薬の抗コルチゾール作用によると考えられ、今後の検討を要すると思われる。
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