研究概要 |
1.研究の成果 ヒト妊娠期における2-hydroxyestradiol 17-sulfate(2-OH-ES)の役割を調べるため、これのヒト妊婦(健康,妊娠中毒症)尿中濃度を調べた。また、ラットを2-OH-ESで前処理し、肝ミクロゾーム中脂質過酸化量の変化を調べた。 1)妊婦尿中2-OH-ESのHPLC及びRIAによる測定: 2-OH-ESの測定において、estradiol 17-sulfateをはじめとするフェノール型成分の干渉が考えられたが、ECD検出器の加電圧を700mVにすることでフェノール体の影響を除くことができた。また、溶離液の組成を種々検討して各成分を良好に分離することができた。この条件で健常妊婦尿を分析した結果、かなりの量の2-OH-ESが排泄されていることが分かった。また、同時に2-OH-ESのRIA法を開発、妊婦尿に応用した。HPLC法で得られた値とほぼ一致したことから、以後の測定はRIA法で行った。その結果、尿中2-OH-ESは妊娠中期から末期にかけて増加すること、妊娠中毒症妊婦の場合ではかなりその値が低いことが分かった。 2)2-OH-ES処理ラット肝ミクロゾーム中の過酸化脂質の測定: ラットに2-OH-ESを腹腔内に投与し、肝ミクロゾーム中のアスコルビン酸及びNADPH依存性脂質過酸化に対する影響を調べたところ、α-トコフェロールよりはるかに強い抑制効果が認められた。 2.研究の考察 妊娠尿中の2-OH-ESは健康な場合はかなり高濃度で排泄されているが、妊娠中毒症では非常に低い値を示すこと、また、2-OH-ESで前処理したラット肝ミクロゾーム中の脂質過酸化はα-トコフェロールの場合よりも著しく抑制されたことから、2-OH-ESはヒト妊娠期において内因性のアンチオキシダントとして作用していることが伺われる。
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