研究概要 |
進行卵巣癌III期、IV期症例や再発例に対して、我々は末梢血幹細胞移植法(peripheral blood stem cell transplantation:PBSCT)を併用した大量化学療法を1991年1月より行ってきた。現在までにPBSCの採取を行ったものは50例であり、そのうち大量化学療法に至ったものは37例である。1996年4月より現在までにPBSC採取は17例に行い、その採取幹細胞を使用し実際に大量化学療法を行ったものは、9例に対し11回行った。大量化学療法のRegimenは、CBDCA1500mg/m^2、CPM3000mg/m^2を分3日間とした。本研究に先立ち患者またはその家族に、治療目的、治療内容、副作用などを十分に説明し同意を得て文書を保存するものとした。 PBSCT併用大量化学療法では、いかにPBSCを多く採取するかが一つのポイントとなる。骨髄機能の急激な回復のときにPBSCを採取することが採取効率を上げるため、採取のための化学療法でCPMを1000mg/m^2とし、nadiorよりG-CSFを投与することとした。採取時のPBSCの評価として、総有核細胞数は、平均3.85×10^<10>(8.52〜0.67×10^<10>)であった。CFU-GM数採取個数の検討では、平均1.74×10^8(0.019〜4.79×10^8)であった。PBSCTの評価として、移植後の骨髄機能回復では、生着不全は1例もなく全例骨髄機能の回復を認めた。白血球数は白血球100以下の期間は平均3日間で(0〜5日間)、1000以下の期間は5.57日(4日間〜7日間)、3000以下の期間が平均9.8日(5日間〜12日間)、幹細胞移植日をDay0とすると、白血球数が1000を越える日は、平均Day8.71(Day8〜Day10)、3000を越える日はDay9.28(Day8〜Day10)であった。血小板数の比較では、血小板輸血なしに2万以上になる日は平均でDay8.28(Day7〜Day10)、5万以上になる日は平均でDay11.9(Day10〜Day13)であった。これは従来われわれが行ってきたABMT併用大量化学療法と比較すると,白血球100以下の期間では有意差を認めないが、白血球1000以上になった日、3000以上になった日、また血小板が5万以上になった日については有意差を認めた。PBSCTは従来のABMTと比較して大量の造血幹細胞を輸注することにより、より早い骨髄の回復が認められた。
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