CD5分子を発現したB cell(B-1細胞)は多くは腹水中に存在し自己抗体を高頻度に産生し原始免疫系に属すと考えられ自己免疫性疾患において末梢血中に増加する。 1)末梢血におけるB-1/total B細胞率;正常非妊婦の末梢血のB-1細胞率は21.2+/-7.5であり内膜症患者全体のB-1細胞率は26.5+/-17.7%であった。抗核抗体陽性の内膜症患者(n=14)のB-1細胞率は36.2+/-22.5%であり抗核抗体陰性の内膜症患者(n=13)は、19.8+/-8.8%であった。内膜症患者末梢血中のB-1細胞率は抗核抗体陽性群では陰性群、非内膜症患者群に比較し有意に上昇していた(p<0.05).同一症例において、danazolによる治療前後で臨床所見の改善と末梢血のB-1細胞率の著明な低下をみた。 2)内膜症患者(n=16)の腹水細胞中のB-1細胞率は51.3+/-25.5%であり非内膜症子宮筋腫25.0+/-12.9%(n=10)に比較し有意の上昇を認めた。 3)内膜症患者の末梢血のB-1細胞率はCA19-9とは相関を認めず、CA125との間に弱相関を認めた。以上より内膜症患者の自己抗体はB-1細胞由来の可能性がある。これは内膜症病巣、腹水に増加するIL-6がpolyclonal B cell activationを起こしている結果を見ている可能性がある。B-1細胞の自己抗体産生はestrogenにより促進することより、自己免疫異常を伴う内膜症に対してもGn-RH analogの効果が期待される。病巣局所に存在するB-1細胞が自己抗体を介しRAFSの病態形成に重要な役割をもつ可能性が示唆された。今後B-1細胞が産生する自己抗体が組織細胞障害活性をもつのか、どのようなmechanismでclass switchをおこし病原性の高いIgG抗体を産生するのか検討したい。
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