研究実績の概要 (目的)近年増加傾向にあるとされる子宮頚部腺癌に関しては、その初期病変がいまだ同定されていない為大多数が進行癌として発見される。それ故前癌病変および初期浸潤の解明に基ずく早期診断法の確立が急務である。本研究においては血管新生因子を用いて免疫組織化学的に検討し子宮頚部腺癌とその関連病変との関係を明らかにする事を目的とした。(対象、方法)1984年1月より現在まで当院にて加療された症例(約2500例)を子宮頚癌取り扱い規約に沿って、子宮頚管腺を中心に再検討したところ連続切片作成可能な腺異形成8例、上皮内線癌7例、微小浸潤腺癌(全例鍍銀染色にて芽出を確認)2例、浸潤腺癌9例と正常頚管腺10例を対象とした。vascular endothelial growth factor(VEGF)を認識するanti-VEGF polyclonal antibodyを一次抗体とし免疫組織化学的(ストレプトアビジン-ビオチン法)に検討した。(結果)正常頚管腺10例中6例にVEGF抗原の発現が見られた。その局在は全例perinuclearであった。腺異形成8例中3例にVEGF抗原の発現が見られた。その局在は1例がperinuclearで他の2例がcytoplasmであった。上皮内腺癌7例中1例にVEGF抗原の発現が見られた。その局在はcytoplasmであった。微小浸潤腺癌2例中2例、浸潤腺癌9例中9例にVEGF抗原の発現が見られた。その局在はすべてcytoplasmであった。(結論)子宮頚部腺癌とその関連病変における上皮内線癌と微小浸潤腺癌と鑑別は芽出でするのか深さで判定するのかが論議を呼ぶところであるが、本研究の結果においてはVEGF抗原の発現が微小浸潤腺癌以上の病変で全例に見られたことは微小浸潤腺癌の診断に芽出が有用であり、なおかつ血管新生因子を獲得し進展、転移能力があることが示唆された。
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