モデル動物となるWistar系雄性ラット(11週令、体重230〜250g)の耳周囲及び側頭骨を解剖した結果、同系統ラットの顔面神経は茎乳突孔から側頭骨外へ出た後に中耳骨胞下面を走行するため、同骨胞を露出・削開する際に損傷されやすいことが判明した。しかし注意深く手術すれば顔面神経を損傷せずに骨胞を露出できることもわかった。 大腿静脈から生理食塩水に溶解したRose Bengal(20mg/kg体重)をマイクロインジェクターにて持続的に注入しながら、キセノンランプを光源とした緑色光(波長ピーク:450nm)を照度6500〜7500ルクスで約20分間にわたって側頭骨表面から顔面神経管水平部〜膝部に照射することで光増感反応による血栓性循環障害によって生じたと思われる顔面神経麻痺を作成することに成功した。しかも同時に迷路機能も障害されるため、照射直後より激しい眼振と平衡障害という合併症も出現していまうことも明らかになった。より選択的に顔面神経のみが障害されるモデルを作成するためにはレーザー光を用いるなど照射の出力を増加させ、さらに特殊レンズを用いて径1mm程度に集光することが必要ではないかと考えられた。 肉眼的に閉眼や髭の動きの有無を観察することて、ある程度顔面神経麻痺の程度をスコア化することが可能であると思われた。 誘発電位記録装置で平均加算して得られた複合活動電位の振幅を健側と比較することで顔面神経麻痺の程度をより客観的に評価し、組織学的検討及び薬理学的検討も行う予定とした。
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