研究概要 |
1.スギ花粉症患者について花粉の飛散する約1ヵ月前(1月)、飛散前期(2月)、飛散中期(3月)、飛散後期(4月)および飛散終了後約1ヵ月(5月)の5回、血清および鼻腔洗浄液を採取し、これらの含まれている可溶性接着分子(可溶性ICAM-1)、可溶性VCAM-1、可溶性E-selectin、可溶性L-selectin)、およびIL-4を市販のELISAキットを用いて測定した。血清中の可溶性ICAM-1および可溶性VCM-1は飛散前期に有意に上昇し、可溶性L-selectinは逆に同時期に有意に低下した[Kato M,et al.Arch Otolaryngol (in press)]。一方、可溶性E-selectinは全期間を通してほとんど変化しなかった。鼻腔洗浄液中の可溶性ICAM-1は、飛散中期に最高値に達した[Kato M,et al.Allergy 51:128-132,1996]。鼻腔洗浄中の可溶性VCAM-1、可溶性E-selectin、可溶性L-selectinは測定下限値以下であった。さらに、血清および鼻腔洗浄液中のIL-4は飛散中期から飛散終了後約1ヵ月にかけて上昇し、飛散中期および飛散後期において血清中の可溶性ICAM-1と負の相関関係を示した[Kato M,et al.Ann Oto Rhino Laryn(in press)]。以上より、可溶性接着分子およびIL-4は自然飛散状態でのスギ花粉症の病態に深く関与している可能性が示唆された。 2.大気汚染物質の一つである重金属(塩化第二水銀)が細胞の活性化にどのような影響を与えるかについて、特に細胞内シグナル伝達の初期段階である蛋白のチリシンリン酸化にターゲットをしぼって解析した。塩化第二水銀はin vivo[Pu M,Akand AA,Kato M,et al.J Cell Biochem 63:104-114,1996]およびin vitro[Pu M,Akhand A Anwarul,Kato M,et al.Oncogene (in press)]でSrc高発現マウス線維芽細胞のc-Srcの自己リン酸化を著しく促進した。これは塩化第二水銀が細胞を著しく活性化する可能性を示唆している。
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