本年度は周囲肉芽組織の活動性が実験的真珠腫形成に与える影響を免疫組織学的に検討した。 1.実験方法 実験には鼓膜に異常所見のない17匹のモルモット(400〜600g)を使用した。ペントバルビタールの腹腔内投与により動物を麻酔し耳介後面の皮膚(全層、2×2mm)を採取した。両側の中耳背側骨胞を開窓し、移植床に加える操作により動物を以下の2群に分けた。 (1)A群:移植床および周囲の粘膜をダイアモンドバ-を用いて除去した後に皮膚片を移植した。 (2)B群:移植床の粘膜を保存し、粘膜面上に直接皮膚片を移植した。 移植後1、2、4週後に骨胞を再開窓して移植内容を摘出し、PLP固定の後に凍結切片を作成して免疫組織染色(ABC法)を行った。一次抗体は抗EGF抗体(Oncogene Science社製モノクロナール抗体)、抗bFGF抗体(同社製ポリクロナール抗体)を用い、陰性コントロールとしてウサギ正常血清を用いた。 2.実験結果と考察 A群では17耳中10耳で周囲の肉芽の増殖を伴った嚢胞の形成が認められたが、B群では嚢胞形成は1耳もみられなかった。EGFはA群の上皮下肉芽の線維芽細胞中で濃染がみられ特に移植後早期で顕著であったが、B群での染色性は乏しかった。これに対しbFGFの染色性には両群で差はみられなかった。 以上の結果より、A群はB群に比べ特に移植後早期で肉芽による上皮の増殖作用が高まっている可能性が考えられた。
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