研究概要 |
今回の研究目的はLazaroid(U-74389G)がシスプラチン(CDDP)による耳毒性に対して軽減効果を有するかどうかを生理学的に検討することとLazaroidのCDDP抗腫瘍効果に与える影響についても検討することであった。 CDDP単独投与群ではコントロール群と比較して16k及び20kHzで明らかな蝸牛神経複合活動電位(CAP)閾値の上昇を認めた.16k及び20kHzのCAP閾値についてはLazaroid併用群とCDDP単独投与群の間に0.1%の危険率で有意差を認めた.さらにLazaroid併用群とコントロール群の間にはいずれの周波数においても有意差は認められなかった.この実験に用いた蝸牛により走査型電子顕微鏡標本を作成した.コントロール群においては内・外有毛細胞ともに障害は認められなかった.CDDP単独群およびLazaroid併用群ではともに内有毛細胞の障害は認められなかったものの,外有毛細胞についてはともにhookおよび基底回転で障害が認められた.しかし,基底回転においては両群間の外有毛細胞障害には0.1%の危険率で有意差が認められ,Lazaroid併用群の外有毛細胞障害がCDDP単独群に比べて明らかに軽度であった.LazaroidのCDDP抗腫瘍効果に与える影響についてはSCC-158扁平上皮癌細胞をFischer344 ratの背部に移植した動物モデルで検討した.コントロール群では背部に生着した腫瘍は急激な増大を示した.一方、CDDP単独投与群とLazaroid併用群との間では共に腫瘍は縮小傾向を示し、両群間の間には統計学的に有意差は認められなかった.LazaroidはCDDP抗腫瘍効果には影響を与えないことがわかった. 以上の実験結果からLazaroid(U-74389G)はCDDP耳毒性を生理学的・組織学的にも軽減するが,CDDPの本来の抗腫瘍効果には影響を与えないことが証明された.従って,CDDP毒性軽減の点からLazaroidは有益な薬物であり,今後その臨床応用が期待される.
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