磁気刺激法の耳鼻咽喉科領域において、以下の検討を行った。 1.顔面神経麻痺症例に関しては、当科を受診するすべての患者に対して磁気刺激法検査を行った。その結果、顔面神経の障害部位よりも中枢側で刺激する磁気刺激法は伝導障害の影響を受けて、末梢の電気刺激法に比し、閾値は高かった。 2.顔面痙攣のある患者で、顔面神経ブロック後の症例では、磁気刺激法も電気刺激と同様に反応が得られた。この相違は変性の程度の差にあると考えられた。また、異常共同運動として顔面痙攣では有名なsynkinesisは電気刺激による方法だけではなく、磁気刺激法を用いても、記録が可能であった。 3.喉頭の筋電図を磁気刺激法を用いて記録することを試みた。現在まで、喉頭の前筋よりの筋電図は記録可能と考えているが、喉頭内筋は刺激時のアーチファクトが大きく、未だ記録ができない。今後も継続して研究の予定であるが、神経が細いにもかかわらず、磁場の散乱があるため、実験動物としては最低でもネコ以上の大きさが望ましく、苦慮している。 4.磁気刺激による、平衡機能の影響は、平成7年度から重心動揺計を用いて検討されている。初期には刺激時のアーチファクトも否定できなかったが、症例を増やす近年では、再現性のある刺激法であると考えている。現在は臨床例を増やして、報告を論文としてまとめているところである。 以上の4項目が本年度の研究結果であるが、耳鼻咽喉科領域においても、磁気刺激法が有用であることを検討した。今後もさらに継続していく予定である。
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