研究概要 |
内眼手術後の眼内炎症および炎症に関連する後発白内障発生に対する活性型ビタミンD_3の効果を検討した.(1)有色家兎眼において水晶体嚢外摘出術(超音波水晶体乳化吸引術)を行い,術後に活性型ビタミンD_3[1α,25(OH)_2D_3]を一日3回点眼.0.1%リン酸ベタメサゾン薬ないしは基剤を点眼した対照群と比較した.レーザーフレア・セルメーターで房水蛋白濃度を経時的に測定したところ,術後の値に群間差はみられなかった.(2)白色家兎眼で同様の処置を行い,活性型ビタミンD_3,ベタメサゾン,基剤を点眼した.術後1,2,4週で眼球を摘出し,水晶体上皮細胞の増殖・分化の程度を比較した.ビタミンD_3群で水晶体上皮細胞の増殖,すなわち後発白内障の発生が抑制される傾向にあった.この実験に関しては,薬剤の眼内透過性および至適濃度を勘案して再実験する予定である.(3)豚眼の水晶体上皮細胞を培養.confluentになった状態で,ディッシュ中央に欠損部を作成.培養液中にビタミンD_3,ベタメサゾン,基剤を添加し,水晶体上皮細胞の増殖・遊走の程度を群間で比較した.添加後1,3,5,7日に細胞欠損領域を撮影・デジタイズして面積を比較したところ,ビタミンD_3は水晶体上皮細胞の増殖・遊走を有意に抑制するとの結果が得られた. 以上から,活性型ビタミンD_3は内眼手術後の急性期炎症は抑制しないが,長期的には水晶体上皮細胞の増殖・遊走を抑制し,白内障術後の後発白内障抑制に有用である可能性が示された.
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