研究概要 |
(1)臨床的検討として,東京医科歯科大学医学部眼科強度近視外来受診患者210名にICG赤外蛍光眼底造影を施行して強度近視眼の脈絡膜循環動態を撮影した。その結果,眼軸長の延長に伴い脈絡膜静脈は後部強膜ぶどう腫縁で血流がウッ滞し,ウッ滞が持続すると異常な静脈吻合を介して随時血流方向を変えて流れやすい方向に血管再構築が行われていた。また,眼内の血流は殆ど眼球赤道部の渦静脈から排出されるとされていたが,強度近視眼では逆に高極部において強膜を貫く後極部渦静脈が約1/4の症例に見られた。これらの後極部渦静脈は主として後極部の脈絡膜血流を受けていたが,さらに赤道部の渦静脈とも吻合し,赤道部方向に向かう血流を受けていたが,さらに赤道部の渦静脈とも吻合し,赤道部方向に向から血流方向もあった。また後極部で強膜を貫いた後,他の渦静脈と合流せずに神経周囲に流入し,強度近視特有の静脈血排出ルートであることが分かった。 (2)さらに生後1日のヒヨコの片眼を遮蔽し,実験的に近視を作成し,孵化後4週目に頚動脈から鋳型樹脂を注入して血管鋳型標本を作製し,眼軸延長に伴う脈絡膜血管の変化を三次元的に観察した。それによると,ヒヨコの脈絡膜大血管,視神経周囲血管などには眼軸延長に伴い著変は見られなかったが,脈絡毛細管板の血管管腔は眼軸延長に伴いやや狭細化し,一部では脈絡毛細管板の断裂様の所見を呈した。以上から種の違いはあるものの,強度近視眼における脈絡膜血管の変化は毛細管板に初発し,徐々に細静脈から大血管の再構築,後極部ルートの形成という段階を経て常に流れやすい方向に再建築が行われているものと推察され,これらの脈絡膜血管の変化が近視性網膜脈絡萎縮の進行に深く関与していると考えられた。
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