研究概要 |
インターロイキンや増殖因子などが眼内炎症に影響を与えることが知られているが、詳細は不明である。本研究ではこれらのうちIL-1β,IL-6,VEGFが眼内炎症にあたえる影響を前房フレア値を指標にして経時的に計測し、またそれらと従来より知られている起炎物質であるプロスタグランジン(以後PG)との関係をPG合成阻害剤であるジクロフェナックナトリウム(以後DS)を使用して検討した。すなわち 1、IL-1β,IL-6,VEGF各1ng〜1μgを点眼麻酔下で有色家兎の硝子体腔内に注入し、レーザーフレアセルメーター(興和、FC-1000)により前房フレア値の測定を経時的に行った。 2、上記薬剤の注入1時間、30分前、および注入後一日4回の0、1%DS点眼を行い、上記同様に経過観察を行った。 結果 1、IL-1βでは1ngの注入で12時間後に約500photoncounts/msec(以後pc/msec)までフレア値は上昇し、以後4日かかって正常化した。DS点眼により注入後2日までのフレア値の上昇は抑制されたが以後は非点眼群と同程度のフレア値上昇がみられた。 2、特にIL-6では100ng以上の注入で1〜2日後に約400pc/msecまでフレア値は上昇し、以後7日かかって正常化した。結果1同様、DS点眼により注入後2日までのフレア値の上昇は抑制されたが以後は非点眼群と同程度のフレア値上昇がみられた。 3、VEGFでは1ng以上の注入で5時間後に約30pc/msecまでフレア値は上昇し、以後24時間かかって正常化した。DS点眼によりフレア値の上昇はやや抑制される傾向にあった。 上記の如く、IL群では高度のフレア値の上昇を認め、その最初の1〜2日目に見られるピーク値はDS点眼により抑制された。このことよりILによる実験的眼内炎においては少なくともその当初はPGを介したものである可能性が示唆された。
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