研究概要 |
家兎眼の後毛様動脈からコラゲナーゼを環流し、毛様体から無色素上皮、色素上皮の二細胞層を単離した。この二細胞層からなる単離した毛様体上皮を透過型電子顕微鏡で観察したところ、細胞間結合装置等の微細構造は正常に保たれていた。この毛様体上皮にカルシウムイオンインジケーター色素FLuo-3を付加し、レーザー共焦点顕微鏡下で観察しながら自律神経作働薬等で刺激を加え、細胞内カルシウム濃度の変動を観察した。 cholinergic agonistは、無色素上皮、色素上皮の両細胞で細胞質内のカルシウム濃度を増加させた。無色素上皮における反応の方が時間的に早く、増加の程度も強かった。両細胞の反応においてoscillatory patternが認められた。α1-adrenergic agonistによる細胞内カルシウムの増加は主に色素上皮に認められ、oscillatory patternを示した。α2-adrenergic agonist単独ではcalciumの増加は認めなかったが、cholinergic agonist刺激後にα2-adrenergic agonistを投与すると増強効果が認められた。これはcholinergicとα2-adrenergic刺激の相互作用があることを示唆していると考えられる。これらの結果は毛様体上皮細胞内にカルシウム情報伝達機構が存在することを示唆している。 cholinergic agonistとα1-adrenergic agonistによる反応の差は、レセプターあるいは情報伝達様式の違いを反映していると推測された。今回計測した細胞内におけるcalcium signalの速度は、単純な拡散によるもとより明らかに速い。Ca^<2+>-induced Ca^<2+> release(CICR)や1,4,5-triphophate(IP3)などの関与について、今後の検討を要すると考えられた。
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