研究概要 |
硝子体における液化部分と線維部分との関連が網膜硝子体病変に及ぼす影響は大きく,3次元的に両者の分布を明らかにすることが重要である。これまで硝子体液化変性過程における硝子体ゲルの定量は困難であったが、新しい磁気共鳴画像法である磁気転移法(Magnetization Transfer Contrast Enhancement : MTC法)は,両者を区別できる可能性がある.すなわち本研究の当初の目的はMTC法により硝子体液化部分がどれほど明確に画像化できるかを判定することであった.まず摘出眼によるin vitro予備実験を行った.新鮮な豚眼より硝子体を摘出しNMR資料管に封入した後,緩和時間ならびにMagnetization Transfer値(Ms/Mo値)の測定を試みた.なお豚の年齢が若いため硝子体は液化しておらず,他の組織や血液の混入なく,かつゲル構造を維持して摘出することは困難であった.硝子体の構成成分が99%水であることから緩和時間は非常に長く,Ms/Mo値も0.966と水に近い値を示した.次いで硝子体周囲のイオン環境,膠質浸透圧を変化することにより硝子体ゲルの相転移を試み,緩和時間ならびにMs/Mo値の変化を調べたが,機械的刺激によりすでに液化していたためか両者に明らかな差を認めなかった.これらの結果の一部は第101回日本眼科学会およびARVO総会にて発表予定である.次に白色家兎を用いて生体眼によるin vivoイメージングを試みた.全身麻酔下に筋弛緩剤にて眼球運動を抑制しグランジエントエコー法による眼球のプロトン強調画像(Mo画像)を得た.次いで水のシグナルから一定周波数離れた領域に飽和パルスを照射しつつ,同じくグラジエントエオ-法により画像(Ms画像)を得ることを試みたが,装置の特性上,充分な飽和パルスを照射できなかったため自由水のシグナルを完全に除去できず画像上からMs/Mo値を計測するには至らなかった.以上の理由でいまだ研究成果の発表は行い得ていない.
|