研究概要 |
角膜は外傷を受ける機会が多く、その修復過程を研究することは意義がある。角膜上皮欠損の修復には欠損部周辺の角膜上皮細胞の遊走と、その後の細胞増殖、接着が重要であるといわれている。しかし創傷治癒過程の第1段階の角膜上皮欠損が周辺上皮細胞にもたらすシグナルについては不明な点が多い。角膜上皮欠損部が周囲の上皮および実質細胞にどのようなシグナルを送り各種細胞性癌遺伝子が発現しているかを明らにするため、ラット角膜創傷治癒過程で、c-fos, c-jun, fosB, junBなどの細胞性癌遺伝子の発現を免疫組織化学、in situ hybridizationで検討した。また角膜創傷治癒に重要な細胞間の接着に影響を与えるデスモゾームの発現に関しても免疫組織化学的に検討した。 正常角膜には、これら細胞性癌遺伝子は認められなかった。c-fos, c-junのmRNAは創作成15〜60分後に、fos B mRNAは創作成30〜60分後に、jun B mRNAは創作成60〜120分後に、創周辺の角膜上皮及び実質細胞に一過性に認められた。また、創作成60〜120分後、c-fos, c-Jun蛋白が同様の部位に一過性に認められた。また、角膜上皮欠損修復過程において、角膜上皮のデスモゾーム構成蛋白が減少した。 角膜上皮修復の第一段階である遊走がおこる以前から、遊走にそなえた遺伝子の転写活性の上昇が起こっていると考えられ、細胞性癌遺伝子の関与が示唆された。また、角膜上皮の遊走に、デスモゾームが重要な働きをしていると考えられた。
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