研究概要 |
ヒトパピローマウイルス(HPV)は角結膜の腫瘍性病変を引き起こすことが知られており,角結膜の腫瘍性病変からは数種類のHPVが検出されている.しかし,その型の決定法は塩基配列の解析によるものではなく,正確さに疑問がもたれる.今回は当眼科学教室で過去5年間に組織標本が得られた角結膜の腫瘍性病変(squamous cell papilloma,actinic keratosis,dysplasta,carcinoma in situ)についてHPVの存在を検索し,検出されたHPVに対しては塩基配列の解析により正確な型決定を行った.ホルマリン固定パラフィン包理組織からDNAを抽出し,HPVのL1遺伝子の一部(約450塩基)の塩基配列をL1共通プライマー(MY11 and MY09)を用いてpolymerase chain reaction(PCR)により増幅後,増幅産物の塩基配列を解析し,既存の報告の塩基配列と比較してHPVの型決定を行った.その結果,squamous cell papillomaの7例中3例のPCR産物が喉頭乳頭腫からクローニングされたプロトタイプのHPV11型と100%の相同性を有し,carcinoma in situの1例中1例のPCR産物は子宮頚部悪性病変からクローニングされたプロトタイプのHPV16型と約98%の相同性を有していた.Actinic keratosisおよびdysplastaからはPCR産物は得られなかった.以前は角結膜の腫瘍性病変から検出されたHPVに対し,その塩基配列までは解析されていなかったが,今回の解析により角結膜腫瘍から検出されたHPVは塩基配列のレベルで他の部位の粘膜病変から検出されるHPVとほぼ同一であることが判明した。
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